有事は実際に有事に遭遇しなければ気づかない。だが、気づいた時にはもう遅い。
先人たちも遭遇したこのジレンマ。その貴重な経験から得られる教訓は、「模倣できる事例」をつくってしまわないことだ。
有事への道は一直線でない。様々な分かれ道(選択肢)の中で一つの道を選び、いくつもの引き返し不能地点を越えて有事に至る。
そのうえで、ある分かれ道での選択の際に大きな影響を与えるのが、過去の分かれ道での選択。その時に一つの道を選んだ結果、他者はどのような反応を示したのか。もしそれが、他者からの称賛を得るものであったのであれば、「今回もそれを真似てやれば良い。他者もあの時に賛同したのだから、今回になって批判はできないはずだ」と考えても無理はない。
こうして、過去の模倣できる事例を根拠に、組織にとって都合の良いように、他者が批判できない空気をつくっていき、結果、その空気によって自らを止められなくなってしまう。
過去の有事には、有事へと向かう組織の暴走のメカニズムを明らかにする教訓が膨大に存在する。だからこそ、次の言葉を深く受け止めなければならない。
「私は〈昭和十年代から教訓を学ばない者は昭和十年代から報復を受ける〉という言を改めて確認したいのだ。」
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