「配置のマネジメントは『組織』の適材適所を考えることですが、採用のマネジメントは『地域』の適材適所を考えることです」
人材マネジメントの文脈で、よくこのようなことを伝えています。採用、配置、評価、報酬、育成、退職からなる人材マネジメントの全体像においては、採用のマネジメントが1番目に重要、そして配置のマネジメントが2番目に重要ですが、人材マネジメントは、突き詰めると「適材適所」に尽きるということがわかるはずです。
もっと言えば、退職のマネジメントは、組織の適材適所よりも地域の適材適所を考えた方が本人も他のスタッフも幸せになると考えるからこそ行うわけで、他の評価、報酬、育成のマネジメントは、その適材適所を最適化するための手段と捉えると、人材マネジメントは適材適所に始まり適材適所に終わるといっても過言ではありません。
ゴーイングコンサーンを前提とする医療機関においては、その終わりのない旅の中で、数多の医療者がそのバスに乗っては降りていきます。したがって、医療機関側からすれば1人/何百人の出来事かもしれません。けれど、実際にバスに乗り降りする医療者1人ひとりにとってみれば、あくまでも一度きり(1人/1人)の人生です。したがって、ビジョン(あるべき姿)という目的地へと走るバスのハンドルを握っている運転手(リーダー)は、乗客(スタッフ)のそれぞれの1/1の人生を運んでいることをどれだけ自覚しておくかが重要になります。
さらに言えば、あるスタッフにとってみれば、その医療機関というバスに乗っているのは、1/1の人生の一時に過ぎないかもしれません。医療機関側からすれば、スタッフが辞めてしまえばそれで関係性は切れるかもしれませんが、本人の高度な専門職としての人生、1人の人間としての人生はこれからも続いていくのです。
だからこそ、本人の1/1の人生を考えれば、より幸せな旅が出来るようにバスを走らせることはもちろん大切ですが、どうしてもこのバスに合わないのであれば、1秒でも早く次のバス停を用意し、1秒でも早く本人がもっと幸せな旅ができるバスに乗り換えてもらう(退職のマネジメント)。逆に、他のバスで幸せになれていない医療者がいて、このバスに乗るほうが幸せになってもらえる自信があるのであれば、1秒でも早くこのバスに乗ってもらう(採用のマネジメント)。
このように、リーダーがスタッフの1/1の人生を本当の意味で考えながら人材マネジメントを行うのであれば、組織の適材適所の視点に留まらず、地域の適材適所の視点でリーダーシップを発揮していく必要があることがわかるはずです。
もちろん、あくまでも仕事の関係に過ぎないリーダーが、スタッフの1/1の人生にどこまで関わるのかにおいて、単純な正解はありません。しかし、どこまで関わるかは別にしても、「リーダーとは、スタッフの1/1の人生に関わることである」ということの意味を理解しておくことがとても大切になるのです。
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