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Writer's picture佐藤 和弘

人材育成(能力開発)は目的から逆算して設計する

何事も「手段は目的に従う」にも関わらず、「手段が目的化する」というのは、往々にして起こります。そもそも、なぜ手段が目的化するのかというと、目的がまだ実際に起こっていないことなのに対して、手段は実際に目の前にあることだからではないでしょうか。目に見えない(未来の)物事より、目に見える(現在の)物事に意識が向きやすいのは自然なことです。


特に人材育成においては、他の人材マネジメントの要素に比べて時間軸の違いがあり、より長期的な視点での取り組みが求められます。つまり、スタッフが能力開発を行って、現場で何を実現するのかという、目的の「距離」が遠いわけです。すると、その遠くにある目的を実現する長旅のなかで、ひたすら手段に触れていくことになりますから、暗黙的に(いつのまにか)能力開発を行うこと自体が目的化してしまうといったことになるのも、また自然なことです。


このような「放っておいたらこうなるよね」といったことに抗う必要があるのであれば、何かしら「思考の仕掛け」をつくらなければなりません。それが、「人材育成を目的から逆算して設計する」ことです。


そもそも、人材育成は、現場である問題が起こっているが、その原因(の1つ)としてスタッフの◯◯という能力が不足しているので、その◯◯をテーマにした指導や研修を行うということを意味します。つまり、人材育成の目的は現場のあるべき姿と現状のギャップを埋めることであり、言い換えれば、スタッフの行動を変えることです。そして、多数のスタッフの行動を変えるためには何かしらの仕組みが重要で、さらに言えば、その仕組みは特別な場面や状況においてではなく、あくまでも現場業務の日常の中に組み込む形でつくることが重要になります。


これらのことをふまえると、人材育成の設計は、「現場業務の仕組み化」を軸に(出発点として)行う、つまり、まず業務の中で◯◯という仕組みをつくる、スタッフの行動を変える(変わらざるを得ない)環境をつくることを考える。その後に、その仕組みをより機能させていくために、指導や研修の内容を考えていく。


このように、目的から逆算して人材育成を考えていくことによって、「迷った時に帰ることができる場所をつくる」、つまり思考の拠り所をつくることができるのです。

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