空気のマネジメントは、慎重派が鍵を握っています。空気は多数派によってつくられるからです。
慎重派は、推進派と抵抗派のどちらを真似した方が良いかを、当事者(推進派と抵抗派)から一歩引いて、冷静に判断しようとする人たちです。その慎重派の特徴は、「沈黙という同調」を自らの身を守るための手段として用いることです。推進派にも抵抗派にも賛同も反対もせず、沈黙という同調をしていれば、いざという時、どちらの側にもつくことができます。
当然ながら、これも善し悪しの話ではなく、性弱説に基づく自然な反応です。推進派や抵抗派のように、当事者として自ら率先して行動に移すことを避けたいと考えている慎重派にとってみれば、たとえ他者にとっては非合理的であっても、あくまでもそれは合理的な行動です。つまり、「当事者にならずに同調者になること」が、慎重派の戦略(戦いを略す方法)なのです。
だからこそ、「当事者にならずに同調者になること」が戦略であり、そのために沈黙という同調を用い、一方で空気をつくる力を持っている多数派の口を開かせる(沈黙を破らせる)ことが何を意味するのかを、特にあるべき姿を描くことが難しい不確実性の高い有事においては、リーダーは十分に理解しておくことが大切です。
有事の空気は、往々にして熱狂の空気をつくりあげます。しかし、その熱狂が向かう目的地が正しいとは限りません。もし、間違った目的地へと誰も止められない熱狂の空気によって向かってしまい、さらに口を開かされた慎重派が熱狂から覚めた時にどのような状態になってしまうのか。有事標準のリーダーは、それらを深く考えながら、多数派を動かしていかなければなりません。
Comments