「抵抗派」と一言で言っても、大きく2種類に分けることができます。1つは、環境変化に関わらず、「このままでいい」「変わりたくない」「新しいことをやりたくない」といった現状維持を望む人。そして、もう1つは、かつて推進派だった人が、それまでの環境に過剰適応した結果、新しい環境変化に適応できず、これまでの自分の行動の否定につながることを恐れて現状維持を選び、抵抗派となる人です。
特に後者が意味するのは、今この瞬間だけを切り取ってそのスタッフを抵抗派と判断するだけでは、判断を見誤りかねないということです。
すでに組織というバスに乗ったスタッフに対して重要なことは「適材適所」の配置のマネジメント、つまりスタッフ1人ひとりにとっての最適な「役割(を担える環境)」を提供することです。もし、どの役割を提供してもそのスタッフが適応できなかったのであれば、「そもそも、なぜそのスタッフをバスに乗せることになったのか?」という問いに向き合わざるを得ません。もし、もっとそのスタッフ本人に合うバスが他にあったのであれば、自分のバスに乗せてしまうことは、結果的にその機会を奪ってしまうことになってしまいます。もちろん、不作為であっても。
それまでの環境に過剰適応した結果、かつての推進派が抵抗派になった場合も同様で、新しい環境の中でも自分の能力を生かせる役割を提供することが重要になります。というのは、組織変革と言っても、全てが一気に変わるということではなく、新しく行っていくことと、これまでと同様に行っていくことに分かれると考える方が自然だからです。
これを「両利きの経営」的に言えば、これまで通りの業務を行っていく「深化領域」を抵抗派にあたるスタッフが担い、環境変化に適応するために新しい業務を見つけていく「探索領域」を推進派にあたるスタッフが担う。このような役割分担ができれば、抵抗派は現状維持的な業務の中で自らの能力を生かし、推進派は変革的な業務の中で自らの能力を生かすことができるのではないでしょうか。そうなれば、お互いにハッピーでしょう。
そのうえで大事なことは、抵抗派と推進派、それぞれが、お互いの役割(の違い)を理解し合うことです。「隣の芝生は青く見える」かもしれませんが、お互いの役割が違うのですから、どちらが良い悪いの話ではないはずです。
これまでの環境に過剰適応しているということは、言い換えれば、現状維持力に長けているとも言えます。かつては推進派だった抵抗派が、その現状維持力を生かしてこれまで通りの業務を行ってもらえるからこそ、推進派は変革的な業務を探す旅ができる。もちろん、逆も然りで、推進派が環境変化に適応するために変革的な業務を探してくれるからこそ、抵抗派はこれまでの業務に集中して取り組むことができる。
このようにとらえながら、それぞれの役割を理解し合う関係が、組織の2:6:2の法則から見える多様性の1つのあるべき姿であると言えます。
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